必殺仕掛人

必殺仕掛人(1作目)

・両テーマ並立、フィクション・ハードボイルド重視のストーリー

 

<テーマの特徴>

必殺シリーズの2つのテーマは、シリーズ1作目「必殺仕掛人」において明確に提示されていた。オープニングナレーション中の、「晴らせぬ恨みを晴らし、許せぬ人でなしを消す」というセリフが<カタルシス(懲悪)ドラマ>のテーマを表現し、「人知れず仕掛けて仕損じなし」「ただしこの稼業江戸職業づくしにはのっていない」というセリフが<ピカレスクロマン>のテーマを表現している。

ストーリーの内容や、仕掛人たちの裏稼業遂行の際の意識などをシリーズ全体を通してみると、2つのテーマに同じ比重をおいたバランスのとれた作品作りがなされたといえる。

 

 -テーマとキャラクターの関係

「裏の仕事を稼業(ビジネス)と割り切って、頼み人への同情や殺す相手への怒りの感情をもたずに冷徹に仕事を遂行する」藤枝梅安は、<ピカレスクロマン>を体現するキャラクターといえる。それに対して「裏の仕事は単なる人殺しではなく、力なき頼み人たちの晴らせぬ恨みを晴らす行為であり、世のため人のためにならない悪党を始末する懲悪的な行為である」という認識をもった元締の音羽屋半右衛門は、<カタルシス(懲悪)ドラマ>を体現するキャラクターといえる。

(もちろん厳密に各作品を分析すれば、藤枝梅安が頼み人への同情や悪人への怒りの感情をもって仕事を遂行する場合もあるし、音羽屋半右衛門が単なる商売として裏の仕事を引き受ける場合もあるだろう。)

西村左内は明確にどちらかのテーマを体現しているとはいえないが、梅安と比較すれば<カタルシス(懲悪)ドラマ>を体現しているキャラクターといえるかもしれない。

なお、梅安の体現している<ピカレスクロマン>のテーマ(頼み人への同情や殺す相手への怒りの感情をもたずに行うビジネスライクな裏稼業を描いたテーマ)を「プロフェッショナル型ピカレスクロマン」と表現しておく。

 

<ストーリーの特徴>

このシリーズ全体を見渡した場合、仕掛人たちの裏稼業を描いたフィクション・ハードボイルド性の強いストーリーに重きがおかれている。

ただ、フィクション・ハードボイルド性の強いストーリーの中にシリアスな人間ドラマの要素を加えることによって、3つのストーリー要素のバランスをはかっているといえる。

だが、次作の「必殺仕置人」と比べると顕著になるのだが、このシリーズはストーリー展開・筋書きの面白さを何よりも重視しているといえる。

 

<まとめ>

テーマとしては、2つのテーマに同じ比重をおいたバランスのとれた作品作りがなされた。

また、「プロフェッショナル型ピカレスクロマン」という、後の「必殺仕置屋稼業」「必殺仕業人」「新必殺仕置人」で全面的に追及されることになるテーマがこの時点でうちだされていた。

主人公たちの裏稼業を描いたフィクション・ハードボイルド性の強いストーリー作りは、その後「助け人走る」「必殺必中仕事屋稼業」「必殺仕置屋稼業」「新必殺仕置人」に受け継がれていった。

必殺シリーズの2つのテーマ、3つのストーリー要素がすべてこのシリーズにおいて提示されており、文字どおり必殺シリーズの原点といえる。

以後のシリーズは、このシリーズで提示されたテーマやストーリーのある部分を強調することによってそのシリーズの個性をうちだしていった。