○必殺仕業人(7作目)
・テーマとストーリーのねじれ現象、ピカレスクロマン・シリアスドラマ重視の制作姿勢
<テーマの特徴>
-テーマとキャラクターの関係
中村主水の続投となった本シリーズ「必殺仕業人」も、前作同様「プロフェッショナル型ピカレスクロマン」のテーマに重きがおかれている。そのため、主水、赤井剣之助、やいと屋又右衛門3人の仕業人がいずれも金のために仕事として殺しを行う「プロフェッショナル型ピカレスクロマン」を体現するキャラクターとなっている。
前作でも、一匹狼的なキャラクター市松の加入によって、グループ内に緊迫した雰囲気が漂っていたが、本シリーズは前作以上に人間関係がシビアでドライな殺伐としたものになり、この点にも<ピカレスクロマン>のテーマが反映されていた。
<ストーリーの特徴>
このシリーズは、テーマは「必殺仕置屋稼業」同様「プロフェッショナル型ピカレスクロマン」に重きがおかれているが、設定・ストーリーは「必殺仕置人」「暗闇仕留人」の流れを継承している(仲買人が存在せず、殺し屋が頼み人から直接仕事の依頼を受ける「直接依頼型」の設定)。
直接依頼型の設定を反映して、ストーリーは悪役の悪事や頼み人・被害者の姿を描いたプロットが主流を占めた。「カタルシスドラマ」「シリアスドラマ」が全体の3分の2、残る3分の1が「仕置屋」の延長線上の「フィクション」としての面白さを追及した作品となっている。
<テーマとストーリーの不協和音>
ピカレスクロマンのテーマは、仕事の依頼を受けた後の裏稼業を描いたプロットと密接な関係にあり、ストーリー的には「フィクション」「ハードボイルド」と相性がよい。カタルシス(懲悪)ドラマのテーマは、悪役の悪事や頼み人・被害者の姿を描いたプロットと密接な関係にあり、ストーリー的には「シリアスな人間ドラマ」と相性がよい。
しかし、このシリーズはテーマはピカレスクロマンに重きをおきながら、ストーリーは「シリアスな人間ドラマ」に重きがおかれている点に特徴がある。
オープニングナレーション全体が、「仕留人」のナレーション「黒船このかた-(略)-針地獄の様呈しおり候」の部分に相当する内容になっている(悪人たちがのさばり、庶民が苦しんでいる不条理な社会の様子)。これは、「仕業人」のストーリーが「仕留人」同様シリアスな人間ドラマ、被害者たちの悲しみの姿を描くことに重きがおかれていることを表している。
しかし、「仕留人」のナレーションではその後、恨みを晴らすことが表現されているが、「仕業人」のナレーションでは「晴らせぬ恨みを晴らす」「悪人たちを制裁する」という内容は語られていない。これは、仕業人たちの行う殺しが金のために行うビジネスライクなものであり、義賊・人助け的な行為ではないことを表しているといえる。
「仕置人」では、悪事や被害者たちの悲しみの姿を描いたシリアスな重く暗い話が描かれているが、クライマックスで仕置人たちが「頼み人の恨みを晴らす」「悪人たちを制裁する」という明確な意志をもって殺しを行うために、視聴者たちは番組を観終わった後カタルシス感・解放感を感じることができる。
また、「仕掛人」「仕置屋」ではビジネスとしてのドライで背徳的な裏稼業が描かれているが、ストーリー自体はフィクション・ハードボイルド性の高いエンターテイメントとして面白い話が展開されているので、番組を観終わった後には爽快感が残ることが多い。
それに対して、「仕業人」ではシリアスな重く暗い話が展開し、その上稼業としてのドライで背徳的な殺しが行われるので、「晴らせぬ恨みを晴らす」解放感、「悪人たちを制裁する」爽快感は得られにくい。
ストーリー、テーマともにヘヴィーな要素が強調された、全シリーズ中でも最も重くハードな作品といえる。
<まとめ>
前作の「仕置屋」がフィクション重視で、シリアスな人間ドラマの要素を軽視していたので、このシリーズでは一転シリアスドラマ重視の作品作りがなされた。
シリアスドラマ重視のシリーズは、テーマとしてはカタルシス(懲悪)ドラマに重きがおかれていたのに、このシリーズはテーマにおいてはピカレスクロマン、ストーリーにおいては「シリアスな人間ドラマ」に重きをおいた珍しい作品となった。
そのため、シリアスな人間ドラマが好きなファンには評価が高いが、「晴らせぬ恨みを晴らす」「悪人たちを制裁する」といったカタルシス(懲悪)ドラマとしての解放感を求めているファンにはそれほど高く評価されていないようにみえる。