○必殺からくり人血風編(9作目)
・シリアスドラマ重視のストーリー
<テーマとストーリーの特徴>
前作「必殺からくり人」は<ピカレスクロマン><カタルシス(懲悪)ドラマ>両テーマが2次的なものとなっていたが、シリーズ第9弾の本作「必殺からくり人血風編」も2つのテーマをつよく反映して制作されているわけではない。特にピカレスクロマンの要素はほとんどない(ただし、映像的には闇の世界を感じさせる耽美的な雰囲気があった)。「頼み人から依頼を受けて裏の仕事を遂行する」という必殺特有のパターンが、設定にもストーリーにもほとんど反映されていないのがこの作品の特徴である(そのことを、パターンにとらわれない斬新な制作姿勢と肯定的に評価するかは人によって判断がわかれるだろう。ちなみに前作「からくり人」にも同様の傾向はあった)。
番組開始当初、元締のおりくが「お金にならない仕事はお断り」と言っていたが、結局は報酬なしで殺しを行った回の方が多かった。また、からくり人たちの裏の仕事に対する意識も、人助け的な意識なのか、ビジネスとしての殺し屋的な意識なのか不明な回が多い。
このシリーズ自体が、次作の「新必殺仕置人」の撮影が遅れたために急遽穴埋めとして作られたそうだから、テーマやストーリーをどうするか、充分に企画を練り上げる余裕がなかったのかもしれない。
このシリーズのそれまでのシリーズとのちがいは、ストーリーの特徴にみられる。このシリーズでは「ピカレスクプロット(仕事の依頼を受けた後の裏稼業を描いたプロット)」に基づいた作品はほとんどなく、フィクション、ハードボイルド性のつよいストーリーもほとんどない。大部分が「カタルシスドラマ(悪役の悪事、被害者・頼み人の悲しみの姿を描いたドラマ)」「シリアスドラマ」である。
筆者の個人的感想は、「必殺以外のテレビ時代劇、勧善懲悪時代劇みたいだな。」というものである(同様の感想をインターネット上でみかけたこともある)。表面的・表層的に必殺っぽい雰囲気を漂わせていながら、中身は「カタルシスドラマ」「シリアスドラマ」である点など、一部のファンが必殺イミテーション番組と呼んでいる作品(「影同心」など)にちかいかもしれない。