○新必殺仕置人(10作目)
・ピカレスクロマンとしての最終作、ハードボイルド性の強調
<テーマの特徴>
「必殺仕置屋稼業」以降、主水シリーズは<ピカレスクロマン>重視の作品作りがなされてきたが、シリーズ第10弾「新必殺仕置人」も「プロフェッショナル型ピカレスクロマン」のテーマに重きをおいて作品が制作されている。
念仏の鉄の再登場をうけて番組タイトルは「新必殺仕置人」となっているが、設定もテーマもストーリーも「必殺仕置人」とは異なっており、むしろ「必殺仕掛人」「必殺仕置屋稼業」の路線を継承した作品といえる。特に虎の会という殺し屋組織や、仕置人たちの監視役死神を登場させたことによって、表の世界では奉行所の眼をかいくぐり、裏の世界では死神の監視下で仕事を遂行しなければならないため、ピカレスクロマンのもつハードボイルド性が最も強調された作品となっている。
オープニングナレーションは「仕置人」のものを再使用しているが、「仕置人」のナレーションは「テロリスト型ピカレスクロマン」を表現したものなので、「新仕置人」のテーマや特徴をとらえたものとはなっていない。必殺シリーズのオープニングナレーションは、各シリーズの特色を巧みにとらえたものが多かったが、このシリーズはオープニングナレーションと作品のテーマとが乖離した珍しいシリーズとなってしまった。
-テーマとキャラクターの関連
「プロフェッショナル型ピカレスクロマン」重視の制作姿勢を反映して、このシリーズに登場する3人の仕置人、中村主水、念仏の鉄、巳代松は皆「プロフェッショナル型ピカレスクロマン」を体現するプロの殺し屋として描かれている。「仕置人」時代からピカレスクロマンを体現していた念仏の鉄はもちろんのこと、表の生活では善人キャラの巳代松も、裏の仕事に対しては頼み人への同情や殺す相手への怒りの感情を持ち込まない、裏稼業をビジネスと割り切ったキャラクターとなっている。
<ストーリーの特徴>
このシリーズは、ストーリー的には2種類のタイプのものから成り立っている。
1つ目のものは、「仕掛人」「仕置屋」を継承した制作姿勢をうけて「ピカレスクプロット(仕事の依頼を受けた後の裏稼業を描いたプロット)」に基づいたフィクション、ハードボイルド性のつよい作品(フィクション色よりは、ハードボイルド色の方がつよくなっている)。
もう1つのものは、「仕置人」「仕留人」「仕業人」でみられた「カタルシスドラマ(悪役の悪事、被害者・頼み人の悲しみの姿を描いたドラマ)」「シリアスドラマ」。シリーズ全体を見渡すと両タイプのものがほぼ半分ずつ制作されている。
(結果的には初期シリーズの集大成といったかんじで、必殺シリーズの2つの系譜を両方受け継いだ作品になったと評価することもできる。)
なお、ハードボイルド色のつよい作品が半数ちかくを占めるシリーズは他にはないので、筆者はこのシリーズの最大の特徴はハードボイルド性の高さにあるとみている。
<まとめ>
全部で30作以上ある必殺シリーズの作品群の中でも、ピカレスクロマンのテーマが重視されたのは「必殺仕置屋稼業」「必殺仕業人」「新必殺仕置人」の3作品だけである(筆者はこの3作品を「ピカレスクロマン3部作」と名付けている)。
ストーリー的には「仕置屋」はフィクション重視、「仕業人」はシリアスな人間ドラマ重視、「新仕置人」はハードボイルド強調と、各シリーズがそれぞれ必殺の3つのストーリー要素の1つを象徴しているといえる。
また、「新仕置人」のエンディングを飾る「愛情無用」「解散無用」の2作は、このシリーズのラストを飾るだけでなく、5年間10作品に渡って作られてきた「ピカレスクロマンとしての必殺シリーズ」を締めくくる作品としても位置付けられる(特に次作の「新必殺からくり人」以降、スタッフがピカレスクロマンのテーマを放棄したために一層その感がつよい)。