○新必殺からくり人(11作目)
・ピカレスクロマンの放棄、カタルシスドラマに基づいた作品制作
<テーマの特徴>
シリーズ第11弾「新必殺からくり人」は、殺し旅という大胆な設定、錦絵に殺す相手を書き込むという斬新なアイデアを盛り込んでマンネリ化の防止に努めているが、テーマの点では必殺シリーズの歴史の中で最も重要な転換が行われた。それは、このシリーズ以降スタッフたちは<ピカレスクロマン>のテーマを放棄してしまったということである(ただし、「必殺仕置屋稼業」以降主水シリーズは<ピカレスクロマン>が重視され、非主水シリーズは相対的に<カタルシス(懲悪)ドラマ>が強調されてきたので、スタッフがピカレスクロマンのテーマを放棄したことがはっきりしたのは次作の「必殺商売人」からである)。
オープニングナレーションも「恨みつらみを晴らす」というテーマが表現され、からくり人たちもピカレスクロマンではなくカタルシス(懲悪)ドラマを体現するキャラクターとなっている。そして、からくり人たちの裏稼業自体が「プロの殺し屋による金のための仕事」ではなく、頼み人の恨みを晴らす行為となっていた。主人公たちの裏の仕事が「お金を貰って人様のお命を頂戴する行為」から「お金を貰って晴らせぬ恨みを晴らす行為」へと転換したといえる。
初期のシリーズでは、「お金を貰って人様のお命を頂戴する裏稼業の人間たちを描く」テーマと、「晴らせぬ恨みを晴らし、許せぬ悪人たちを制裁する」テーマ、2つの矛盾・背反するテーマに基づいて作品が制作されていたが、このシリーズ以降必殺のテーマは「お金を貰って晴らせぬ恨みを晴らす裏稼業の人間たちの姿を描く」ものになった。主人公たちの裏の仕事が「殺し屋稼業」ではなく、「復讐代行業」へと変質したといえる。
<ストーリーの特徴>
本作は殺し旅という新しい設定がとられたために、ストーリー作りもそれまでのスタイルとは若干異なったものとなった。
従来の「江戸定着型」の設定では、主人公たちの日常生活が描かれていて、それがストーリー作りにバリエーションをもたらしていたが、殺し旅の設定では主人公たちの果たす役割が限られてしまうため、ストーリーの幅は狭まってしまったといえる。
このシリーズでは、「カタルシスプロット(悪役の悪事、被害者の悲しみの姿を描いたプロット)」とからくり人たちの密偵活動が同時進行で描かれる構造の作品が多く、ストーリーの要素は「カタルシスドラマ」「シリアスドラマ」が大半であった(第2話の「戸塚」は例外的にフィクション色のつよい作品であった)。
<感想>
作品を面白くしようとする創意工夫は感じられるが、内容的にはシリーズの長期化によるマンネリ化が感じられる。テーマ的にはピカレスクロマンのテーマを放棄したことにより、それまでのシリーズにあったダイナミズムが失われた。また、ストーリー的にはワンパターン化がみられる。